「血糖コントロールに関する糖尿病患者と予備軍の意識調査」を発表

 本日、2019年11月14日の世界糖尿病デーにあたり、『血糖トレンド委員会』(代表世話人:東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授 西村理明 以下、当委員会)は、全国に合計2,000万人いると推計1) されている糖尿病患者さんおよび糖尿病予備群における糖尿病管理、血糖コントロールの実態を把握すべく、意識調査を実施しました。

 当委員会は、血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について、医学的、学術的および患者さん視点でわかりやすく正確な情報発信を行うこと目的とした委員会です。

調査で明らかになった、糖尿病や血糖値に関する意識や対策の実態と、知っておきたい正しい情報についてまとめます。

1) 厚生労働省『国民健康・栄養調査』平成29年

【主な調査結果】

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糖尿病・血糖コントロールに関する知識の理解状況をみると、正答率が50%以下の項目も多数。健康診断のHbA1cが正常なら糖尿病の心配はないと考えている人は2人に1人。

■ほとんどの人が血糖値を気にしているものの、十分な対策ができているのは半数のみ。予備群に至っては4人に3人が対策は不十分と回答。

■寒くなる季節には、さらに血糖コントロールを悪化させる行動をとりがちに。年末年始を含む冬は、2人に1人が運動不足に、3人に1人が外食が増えると回答。

まだ知られていない「血糖トレンド」。欧米では新しい治療目標が発表されたが、患者さんでも「血糖トレンド」を聞いたことがある人は3割。

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<調査概要>

・調査名:糖尿病および血糖トレンドに関する意識調査

・調査期間:2019年10月18日~10月20日          

・調査方法:インターネット調査

・調査対象:糖尿病患者もしくは糖尿病予備群 413名(内訳:1型糖尿病103名、2型糖尿病155名、予備群155名)

・調査目的:糖尿病患者・予備群の糖尿病および血糖トレンドに関する意識や対策の実態を明らかにする

1:誤解が多かった、糖尿病や血糖コントロールに関する知識

 今回の調査では、一般的な糖尿病に関する用語(食後高血糖、インスリン、糖尿病網膜症、HbA1c)については、9割以上の人が「聞いたことがある」と回答したものの、実際にHbA1cに関する具体的な知識を問う設問では、正答率は50%以下でした。ここから、一般的に聞いたことがある用語の知識でも、実際には誤解してしまっている人が多いことがわかります。

実際に、特に正答率が50%以下と低かった知識のうち、糖尿病や血糖コントロール対策をする上で重要と思われるものを以下にご紹介します。

※HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映し、糖尿病の診断にも使われる検査値です

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【知られていない 糖尿病・血糖コントロールに関する知識】 ※( )内の数字は調査での正答率

■ 健康診断のHbA1cが正常であれば、糖尿病の心配はない (47.7%)

  …正解は× 糖尿病はHbA1cの値だけでなく、空腹時などの血糖値を用いて診断されます。一度の健康診断でHbA1cが正常値でも、糖尿病である可能性もあります。

   *本調査にて、HbA1cの言葉を聞いたことがあり、意味も知っていると答えた割合:80.6%

■ HbA1cが高い人は一日を通して血糖値が高い (39.2%)

  …正解は× 血糖値は一日のうちで変動を繰り返しています。血糖の変動(血糖トレンド)をみると、HbA1cが高くても、夜間や空腹時などには低血糖になっている場合があります。

■ 血糖値は脂質やカロリーと関係するので、かけそばと天ぷらそばなら、具が少ないかけそばのほうが良い (38.3%)

  …正解は× ヘルシーに思えるかけそばですが、実は具が多い天ぷらそばの方が、糖質の吸収を遅くするため、血糖値の上昇は緩やかになります。

■ 低血糖になると必ずめまいや失神などの何らかの自覚症状が出る (25.7%)

  …正解は× 低血糖でも症状のない「無自覚性低血糖」といわれる状態があります。気付かずに低血糖を起こすと大変危険なため、血糖トレンドをみて評価することが望ましいです。

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 以上、血糖値に関する知識の理解度についての調査結果でした。

 

 では、患者さん・予備群自身の血糖値に対する意識や、対策の状況はどうだったでしょうか。

 続けて、同じ調査の結果から明らかになった現状をご紹介します。

2:気にしているけど、対策できない血糖値 冬の季節はさらにリスクUP!

 血糖値への意識について、「普段から血糖値を気にしているか」を調査したところ、気にしていると答えた人の割合は患者さん・予備群とも9割を超え、ほとんどの人が自分の血糖値を気にしていることがわかりました。

 一方、血糖値対策の状況について、「現在行っている血糖値のコントロール対策で十分だと思うか」を聞いた質問では、「不十分」または「できていない」という人が過半数を占め、特に予備群では4人に3人がそのように感じており、血糖値を気にしつつも、対策は後回しになっているという実態が明らかになりました。

 また、調査では、季節ごとにありがちな血糖コントロールに影響する行動について、あてはまるかどうかを質問しました。回答の多かったものは、「寒くなると部屋にこもりがちで運動不足になる(46.5%)」「年末年始は外食の機会が多く、ついつい食べ過ぎてしまう(35.6%)」などで、これからの冬の時期には特に、血糖コントロールを悪化させるような行動をしがちであることがわかりました。

3:新しい管理目標になった「血糖トレンド」 でも知っている人は1割未満…

 正しい対策をとるために重要な、知っておきたい血糖の知識の1つが、「血糖トレンド」です。「血糖トレンド」とは、血糖値を点(ある時点の測定値)ではなく線(連続測定の値)で把握するもので、専用の機器を使って24時間連続測定することにより、血糖値スパイクなどリスクの高い急激な血糖変動を把握することができます。

 今年6月に開催された第79回⽶国糖尿病学会学術集会(ADA2019)においては、「血糖トレンド」の観点から規定した血糖管理の新たな目標が、発表されました2)。

 しかし、今回の調査においては、「血糖トレンド」について、「聞いたことがある」と回答した人は31.9%にとどまり、そのうち「意味も知っている」と回答した人は7.7%のみでした。内訳をみると、1型糖尿病患者さんでは「聞いたことがある」が44.7%と高く、2型糖尿病患者さん、予備群ではそれぞれ27.8%、27.7%でした。このことから、よりきめ細かな血糖管理が必要になる1型糖尿病患者さんには知られ始めているものの、その他の方々にはまだ「血糖トレンド」という言葉自体があまり知られていないということがわかりました。

 調査の中で、「どのような情報をもっと知りたいと思うか」について質問したところ、「糖尿病を予防・治療するための正しい知識」と「血糖コントロールに関する正しい知識・コツ」が6割以上の回答となり、正しい情報を得たいというニーズが高いことが示されました。血糖トレンド委員会では、「血糖値」や「血糖トレンド」に関する正しい情報を今後も発信していきます。

2) Diabetes Care. 2019 Jun 8. pii: dci190028. doi: 10.2337/dci19-0028.

4:調査結果を受けて 専門家からのコメント

【血糖トレンド委員会 代表世話人より】

西村 理明(にしむら りめい)

東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授

 調査結果から、多くの糖尿病患者さんおよび予備群の方々では、血糖コントロールについて誤った知識を持っている方の割合が少なくないことがわかりました。一方で、血糖値については多くの人が普段から気にされており、適切な血糖コントロールをしていきたいという希望をもっておられることも明らかになりました。血糖トレンド委員会では、血糖値や「血糖トレンド」について、理解と適切な対策に役立つ情報を発信してまいります。冬場も安心して生活を楽しんでいただけるような、正しい知識や情報を得られる場にしていきたいと考えております。

 血糖トレンドは、専用の機器を使って24時間測定することによって把握できます。ご自身の血糖トレンドについて知りたい場合は、かかりつけの医師にご相談されてください。 

【血糖トレンド委員会 概要】

名称:  血糖トレンド委員会

ウェブサイト: https://kettotrend.com

設立日: 2019年11月14日(世界糖尿病デー)

活動目的: 本会は、血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について医学的、学術的および患者さん視点でわかりやすく正確な情報発信を行うことを目的とする。

運営事務局: 株式会社コスモ・ピーアール

企画:    アボット ジャパン株式会社

協賛:    3Hクリニカルトライアル株式会社

構成(世話人):

 西村 理明(にしむら りめい)- 代表世話人

東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授

1991年3月東京慈恵会医科大学卒業。2002年4月~2006年7月東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科助手、2006年8月~2011年3月同講師、2011年4月~2018年9月同准教授を経て、2018年9月より現職。

 

 利根 淳仁(とね あつひと) 

岡山済生会総合病院 内科・糖尿病センター 副センター長

2000年3月岡山大学医学部卒業。岡山赤十字病院、国立病院機構岡山医療センター、岡山大学病院を経て、2018年から岡山済生会総合病院に勤務。日本糖尿病学会専門医・研修指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医。 

 國枝 加誉(くにえだ かよ) 

管理栄養士 2型糖尿病患者

17歳でやせの2型糖尿病を発症、食健康の重要性を体感し管理栄養士の道へ。「生活習慣病の発症と重症化」双方の予防に重点を起き、フリーランス栄養士として医療機関での栄養相談、講演・セミナー、執筆、栄養士の教育などに従事。2018年11月より、とくだ内科クリニックにて栄養相談・療養相談を担当。

 相田 幸二(あいた こうじ)

料理研究家 1型糖尿病患者

16歳からホテルの和食部門で板前修業をし、2005年に料理レシピのブログを開始。ヤフーブログランキングで常に上位を維持するほどの人気を博し、レシピ本「こうちゃんの簡単料理レシピ」を発売。仙台を拠点にテレビやラジオ、雑誌などで活躍するほか、講演活動も行っている。2018年1月に1型糖尿病であることを公表。

血糖コントロールの重要性について

 糖尿病患者さんは、高血糖および低血糖で推移する時間の長さをできるだけ短縮するために、血糖値を慎重に管理する必要があります。良好な血糖コントロールは、糖尿病の合併症の発症や進行を抑制して、生活の質(QOL)を維持し、健康寿命を確保するために不可欠です。日々の生活での血糖変動を抑えることが、糖尿病患者さんがより健康的・活動的な生活を送るための重要なポイントになります。

血糖トレンドとは

 「血糖トレンド」とは糖尿病の管理における新しい概念です。睡眠時も含め24時間連続でグルコース値を測定する技術により、患者さんや医師が血糖トレンド(変動)を「見える化」できるようになりました。血糖トレンドの「見える化」は、血糖の変動や推移を点(ある時点の測定値)ではなく波形の線(連続測定の値)で表示するため、血糖コントロール状況の全体像や傾向を容易に把握することができます。血糖トレンドが「見える化」されることで、糖尿病患者さんは無自覚性低血糖や高血糖の存在に早期に気づき、予測して対策をたてることが可能となるため、主体的な行動が取りやすくなります。また、この情報をもとに、医療従事者は患者さんと協働して、より良い治療方針を決定できるようになります。

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